月収100万という欲求 B
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月収100万円という欲求A
違和感の連続
この日を境に僕の心が壊れていきます。
正直、自分で売っている商品に興味があるわけでもなかったので、
真剣にその商品の性能などを深く勉強しようとも思いませんでした。
そんなことより、日々数字のプレッシャーとの戦いで、
契約が取れたら安泰、取れなければ地獄。
毎日の精神状態は上がったり、下がったりの乱高下を続けていました。
それでも、殆どの人は生活のため、家族のため、未来のためにたたき続けます。
入社して半年も過ぎると僕の下に後輩が入ってきました。
元気いっぱいの人もいれば、この人は絶対に売れないだろうな。
そんなおとなしいタイプの人ももいます。 全部で4〜5人だったと記憶しています。
この頃、僕はリーダーという肩書を与えられ、新人と同行してたたく事が増えました。
けれども先輩の下についていた頃や一人の時に比べて、
後輩が後ろに立つと全く商品が売れず、大スランプに陥ります。
というよりも売れても、売れても翌日にキャンセルされてしまう日々が続くのです。
多い時には、1日に3件契約して翌日に3件ともキャンセル。
そんな悪夢のような日が1週間も続いたのです。
必死に契約を取ってもキャンセルされてしまえば、売り上げは当然0円です。
『何かが今までと違う!』
僕は焦り、悩みました。
これでは、汗水たらして働いても給料は全くありません。
それどころか税金や保険料だけ引かれて借金を抱える事になってしまいます。
理由はわかっていました。
なまじ、この頃になると中途半端にしゃべれる事に慣れてしまい、
上っ面だけのセールストークでお客さんを丸め込もうとしていたのです。
つまりお客さんに本当の共感を得られていなかったのです。
しかし、理由はわかっていても、何をどうしたらいいのかまではわかりませんでした。
急に自分のスタイルを変えろと言われても簡単に出来るはずもありません。
僕は家に帰っても、妻に仕事の事を相談する事も出来ませんでした。
というより、心配をかけるのが嫌だったので
会社の雰囲気や仕事内容は全く妻には話していなかったのです。
毎日毎日、寝ても覚めてもどうしたら契約が取れるのか。
その事ばかり考え過ぎてついには体調まで崩してしまう始末。
食欲も無くなり、体のあちこちが痛み出し、あまりにもボーっと悩んでいる事が多くなり、妻の勧めで医者に行くと
『軽いうつ病』だと診断されました。
僕は、医者からそう言われても意外にも冷静でした。
薬を処方してもらい、他にやる事も無いので、家で横になっているしかありません。
そんな時、僕はあの時の金物屋のおばあちゃんの事が、ふっと頭に浮かんだのです。
『あんたは、いい人そうだから、何か買わにゃ悪いねー』
そう言ってくれた、あのおばあちゃんです。
(あのおばあちゃんはまだ元気にしてるだろうか?)
そんな事を考えていると、自然に涙が溢れてきました。
所詮 僕は、いい人でもなければ、金の亡者にもなれなかった。
上っ面だけで商売しようとした中途半端な甘い考えでは、
こんなハードで金の亡者が正しいとされる世界で生きていく事は僕には無理だろうな。
そんな考えが頭の中を駆け巡り、
僕の中で何かが吹っ切れた気がしました。
そして3日後、
僕は会社を辞めた。
体調を整え、一からやり直す事を決意したのです。
たった半年ほど勤めただけで、驚くくらいに白髪が増えた。
それほど濃密な半年間だった。
本当はもっと悲惨なエピソードもあるのですが、ブログじゃ書ききれないので今回は省略します。
この時の経験は後に大きく役に立ってきますが、当時は精神的にも肉体的にも疲れ果て
ボロボロになった事を覚えています。
飲食店の長時間労働やサービス残業と違い、別の種類のブラックな世界を体験したお話でしたが、今まで自分が知らなかった日本の格差社会を少し垣間見た気がしました。
それでもこの社会で生きていくには、お金は必要なんです。
だからこそ、人生を我慢で埋め尽くし、他人に自分の時間を奪われないようにするには、
資産を増やす仕組み作りが重要になってくるのです。
しかし、そんな事に気づくのはこの何年も後になるのですが。。。。