失敗のリスクに怖気ずく日々
店長になったあの日から3年が経ちましたが、
僕はまだ起業できていませんでした。。。
店の責任者になって、初めて知るリスクの多さに怖気づいてしまったのです。
ここまで、ある程度の経験を積んだつもりでしたが、、知れば知るほど
『本当にこの商売は成功するのか?』
『独立して家族を養っていく事が出来るのか?』
『失敗して何千万という借金を返していく事が出来るのか?』
・
・
・
・
この頃になると、そんなリスクばかりが頭に浮かんで、毎日の忙しさを理由に行動できない自分に苛立ちを感じていました。
当時、僕が店長を任されていたお店の売り上げは、多い時で月に1000万円ほどでした。
1日平均 約30万とすると 客単価が850円程度でしたから、 1日に350人以上来店してもらっている事になります。
週末があるのでもう少しばらつきはありますが、当時、カフェとしては、結構 繁盛していたほうだと思います。
まずこの業界に入って一番驚いたのは、季節によってこれほど売上の波がある商売なのかという事でした。
そんな事すら殆ど知らずに店長になったのですから、初年度の経費管理はめちゃくちゃ大変でした。
売上が高くても、低くても かかる経費は殆ど変動がないので(家賃とか電気代とか)、いかに先の売り上げをしっかり予想して毎日適切な経費で営業しなければ、とんでもない事態になってしまいます。
ちなみに必要経費を簡単にまとめると
食材費
(いわずとしれた原価です。 肉とか野菜とか食材全般です。 ここをケチればお客さんは離れます。)
人件費
(社員やアルバイトの給料です。 ここの管理が一番重要で大変です。)
光熱費
(水道代や電気代です。 家庭と違いびっくりするぐらい高額です。)
消耗品費
(トイレットペーパー、サランラップ、洗剤など使えば減るものです。)
什器・備品費
(お皿やグラス、包丁、まな板など必要な道具です。)
広告費
(当時はフリーペーパーに掲載したりクーポンがついたチラシを新聞に折り込んだり。 売上に大きく左右します。)
求人広告費
(アルバイトの入れ替わりが激しいので毎月のように掲載すると莫大な金額がかかります。)
修繕費
(一番高額なのは、業務用のエアコンや冷蔵庫が壊れると100万円単位でお金が吹っ飛びます。)
などなど
もう少し細かい費用もあるのですが、殆どは上に記載した支出項目をしっかり管理しいていれば大丈夫だと思います。
ただ、毎日全てシビアに節約しなければ、あっという間に赤字に転落してしまいます。
つまり、相当なケチケチじゃないと利益を残すことなどかなり困難な職業だと思いました。
店長として特に管理を求められるのが、人件費と食材費です。
この2つの支出で、売上の約60%以上が飛んでいきます。
もし売上が1000万なら 600万円以上が経費として消えていきます。
そこから更に 水道光熱費、消耗品費、修繕費など引かれると手元には殆ど残らない月も珍しくありません。
食材費を切り詰めればお客さんは来なくなるので、売り上げが自然に落ちていきまます。
そうなるといかに人件費を抑えるかが大きなポイントになりますが、人を削りすぎれば、お店は回らなくなり、これまた、お客さんの不満を招いて売り上げに大きく響きます。
ですから、飲食業界は、時給制のアルバイトが大半を占めて、売り上げに応じた勤務シフトの微調整で毎日適正な人件費を保っているというわけです。
つまり、固定給の店長や社員が、足りない部分を全てカバーしなければ営業として成り立たなくなっているのです。
これが、飲食業界の長時間労働とサービス残業に繋がる根本的なからくりです。
この業界に携わっている人なら共感いただけると思いますが、
いかに、この人件費の管理が出来るか出来ないかが、お店の利益を大きく左右するかという事です。
つまらないプライドはとっとと捨てよう。
飲食業界で雇われの立場(特に店長クラス)にいると、労働環境がまさに生き地獄です。
会社からは、毎日のように人件費の管理について口うるさく言われます。
新人店長が人件費を抑えるために一番最初に思いつくことは、
『自分が長時間働く』 という事です。
悲しいかな、ほとんどの店長は、最初周りのスタッフを効率良く動かしたり、指示を出したりする事ができません。
なので 足りない部分は、まず自分が穴埋めに走ります。
そうすると余計に全体が見渡せなくなるので、すぐに別の個所に穴が開きます。
結局 又、自分で走って穴を塞ごうとします。
この負のスパイラル状態に陥ると 自分のプライベートや体力は完全に崩壊します。
僕も店長になったばかりの頃、
決められた人件費の枠を守る事がなかなか出来ませんでした。
そして、毎日ネチネチ嫌味を言ってくる上司に対して、つい『カッ』となって
『来月人件費をオーバーしたら給料は1円も要りません!』
『僕の給料を全て店の利益に充ててもらって結構です。』
と啖呵(たんか)を切ってしまい、あとから随分後悔した経験があります。
それでも その当時は、睡眠以外は殆ど出勤して、死ぬ思いをしながら なんとか予算を達成しましたが、二度と同じ事をやろうとは思いません。
ちなみにその月の労働時間は450時間を超えていましたが、残業時間は0時間です。
時給に換算すると500円程度でした。
今考えると気が狂っていたとしか思えません。どちらにしても、結局はタダ働きのようなものでした。
びっくりしたのは、それ以上に働いていた同僚が何人かいた事です。
ここまでくると、もはやカルト教団の集まりですね。(笑)
確かに仕事が生きがいなら、その仕事に命を捧げるのも良いでしょう。
でも大切な人や家族、子供を犠牲にしてまで仕事にのめり込むなら、一体 何のために生まれてきたのか分からなくなりますね。
つまらないプライドは自分の寿命を縮めるだけです。
こういった事もあって、余計に独立開業して『全て自分が責任を負う』という事の自信が少しずつ薄らいできていたのです。
今思えば、さっさと自由な人生を手に入れる努力をその時にするべきでした。