雇われない生き方を決断した日
よ、 4000万!??
ある日、朝から ただならぬ空気がフロアに蔓延していました。
経理のX部長が、社長に大声で罵倒されていたのですが、その様子が未だかつてないぐらいの勢いだったのか、フロア内にいる全員がざわついていました。
何事かと思って聞き耳を立てる暇もなく、すぐに自分も社長に呼ばれ事態の詳細をこう説明された。
「ま、まじか!!」
思わず口に出したのを覚えています。
当時、僕が勤めていた会社は飲食店を経営するフランチャイズの本部でした。自分はそこの営業担当だったのですが。。。。。
経理担当者いわく 3年ほど前から 自分が担当している加盟店に対して毎月入金してもらうべきロイヤリティー(特許使用料)等の諸経費を全く請求していなかったらしく。。。。。
当然、殆どの店舗が未入金状態だったことが判明。
加盟店は全店舗で15店舗あるのですが、未収総額が、なんと4000万円以上になっているそうな。
それも回収が非常に困難なうえに随分 過去に遡るので、お手上げ状態になっている。
という事らしい。
簡単に言うと、3年以上も前から もらうべき代金を取らず客にただで飲み食いさせて、4000万円の請求書が最近会社に届いて初めて明るみにでたようなものだ。
「何故そんな杜撰(ずさん)な事が起こるんだ???」と誰もが首をかしげたくなる内容ですが、事実 起こってしまったのは間違いありません。
そもそも自分が営業を担当したのは半年ほど前からなのでそんな昔からのいきさつなど知る由もありません。更に社内のルールとしてお金に絡んだ事は全て経理担当が直接FCのオーナーとやり取りする事になっていました。
したがって 過去の担当者も含めて営業担当は金銭のやり取りに関する事に一切タッチして来なかったので今回の件は自分にとって全くの初耳。
しかしながら、知らなかったとはいえ重要なのは現在の担当は自分だという事。
当然、全責任の矛先が、その経理部長と僕に向けられたのです。
それから、数週間にわたり 悪夢の日々が延々と続きました。
毎日のようにその未収代金を遠路はるばる2時間以上かけて回収する事を中心に仕事を進めていましたが、
なんせ 随分昔の事の上に、明らかに非がこちらにある案件なので死ぬほど苦労しました。
債権回収の経験もありませんでしたが、それでも必死に頭を下げ何度も足を運び少しずつ少しずつ未収金を回収する事に全力をあげてきました。
その間 毎日 社長からパワハラまがいの言葉を浴びせられ、通常業務に支障をきたそうが、帰宅が深夜に及ぼうが耐え忍ぶ毎日を耐え続けてきました。
今思えば、そんな辛い思いに耐える事が出来たのも家族の存在があったからこそだと思っています。
ふと気がつけば会社にしがみつく年齢になり、周りからはベテランだからと期待され、いつしか褒められる事もなく過去の実績だけを頼りに半分流されてここまで来た気がします。
これぐらいの辛い経験をしている人は、世の中にたくさんいるに違いないと自分に言い聞かせる事が出来たのも、全て家族のためでした。
しかし、ある日
「残りはおまえらが立て替えとけ!」
この件が発覚して3か月、回収のめどがつかずに、業を煮やした社長が、ついにはその代金まで僕らに負担しろと言ってきたのです。
「残りって。。。 まだ1千万円以上残ってるぞ」
同時に心の中で何か弾けた音がしました。
翌朝、出社するやいなや、社長室に出向き、
無言で社長の机に思いっきり 辞表を叩きつけその足で会社をあとにしました。
前の晩、寝ずに考えた末の事です。
もはや大人としての常識もへったくれもありません。当然何らかのペナルティーも覚悟のうえでの判断です。
それでも 残りの人生を考えたら、この理不尽な環境で一生飼い殺しにされるのだけはごめんだと思い、半分逃げるような心境で会社を後にしたのです。
会社を飛び出した直後の気持ちは
不思議と これ以上ないぐらい晴れ晴れとし、解放感にあふれ、とても清々しい気持ちになりました。
これからは、誰にも雇われずに生きていこう。
そう決めた瞬間でした。